千利休書状(二月十四日)一通
紙本墨書 縦126.7㎝ 横
千利休筆 松井康之宛 天正19年(1591)2月14日付け 一般財団法人松井文庫所蔵
熊本県指定重要文化財(平成30年3月27日指定)
茶人として有名な千利休(1522〜1591)は、織田信長や豊臣秀吉に仕え、わび茶の完成者として一世を風靡しますが、最後は秀吉により切腹を命じられます。
この手紙は、利休が松井康之(1550~1612、のちに八代城主となる松井家の初代)にあてたもので、切腹する2月28日の2週間前に書かれたものです。利休には多くの弟子がいましたが、秀吉の勘気に触れることを恐れ、京を追放される利休を淀の船着き場で見送ったのは、細川忠興と古田織部の二人だけでした。
この手紙には、利休へ届け物をした康之へのお礼とともに、見送りに来ていた忠興と織部の姿を見つけ驚いたこと、有難かったことを伝えてほしいことが記されています。利休と弟子である忠興や康之との深い絆を物語る手紙であるとともに、紙の端を割いて巻き留めとする「切封」が残っており、利休から届いた状態のままで残っていることがたいへん貴重です。
(文意)
わざわざの飛脚、大変ありがとうございます。
富田知信殿と柘植与一殿を使者に、堺に下るようにと、秀吉様から命じられたので、にわかに昨夜、出立しました。
淀まで細川忠興様と古田織部様が見送りに来られたのを船着場で見つけ、驚きました。
感謝の旨をお二人にお伝えください。恐惶謹言。
二月十四日利休宗易
松井佐渡様