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松浜軒の肥後花菖蒲

国指定名勝「松浜軒」では、毎年6月上旬、肥後花菖蒲が見頃を迎えます。
肥後六花の一つである肥後花菖蒲の花色には、紅、白、藍、瑠璃、紺、紫、鼠の七色があり、花型が豊かで大きく、花芯が大きく立っているのが特徴。
本来は鉢植にして室内で観賞し、門外不出とされる花です。
松浜軒は、唯一地植えを許された特別な空間です。

見頃:5月下旬から6月初旬

 国指定名勝「松浜軒」では、毎年6月上旬、肥後花菖蒲が見頃を迎えます。肥後六花のひとつ花菖蒲は、天保4年(1833)、熊本藩士吉田可智が江戸の旗本松平定朝から、花菖蒲培養の秘訣を受け、苗を貰い熊本で鉢植えとして培養したのが始まりとされ、武士の精神修養と品性向上のため、栽培が奨励されました。

 その伝統は、熊本花菖蒲保存会「満月会」が受け継ぎ、種苗は必ず鉢に植え、苗や種子は門外不出という伝統を厳しく守っておられます。松浜軒内の案内板に「満月会より唯一地植を許されたもの」と説明されています。武士に好まれた気品ある姿かたちを見ていると、こちらも背筋をスッと伸ばしたくなります。

 「松浜軒」は「未来に残したい花風景」として”池坊花逍遥100選”に熊本県から唯一選ばれています(H27.1.29認定)。 http://www.ikenobo.jp/hanashouyou/

 さて、花菖蒲が入る以前の松浜軒の景観はどのようなものだったのでしょうか。明和元年(1764)、熊本藩士小笠原長意が八代を訪れた際の見聞録「八代紀行」には、

 庭の景色又いわん事もわすれ下り立てみけるに池ひろくほりて燕子花(かきつばた)

 沢山に植えおかれ河骨(こうほね)、沢桔梗、川竹、蓮 所々に見へ 三筋の藤棚他の

 上に十間程につくりわたしたるありさま・・・、かかる所は世の中にあるへくもなし

 となんみへける。

 とあり、庭の主役は今とは違っていたようです。今でも、松浜軒南西側の池には、燕子花が植えられ、花菖蒲より半月ほど早く見ごろを迎えます。

参考:「八代紀行」 小笠原長意著(「雑花錦語集 巻119」所収 熊本県立図書館所蔵)