展示期間:1月末~3月末
松浜軒に飾られるお雛さまは、江戸時代の天保9年(1838)、八代城主松井家10代章之(てるゆき)(1813~87)に輿入した琴姫(1813~48)とその娘、孫娘の雛たちです。
琴姫は、熊本藩主細川家の初代幽斎の息子興元を初代とする茂木細川家(下野国谷田部藩主)の姫で、母方の祖母は谷田部藩主細川興徳に嫁いだ熊本藩主細川重賢の娘、父方の祖母は細川家の分家で宇土支藩主細川興文の娘という目眩がするほど光輝くお姫様でした。
松井家では琴姫のため、天保10年(1839)、京都三条の「幾久屋」から5組の古今雛を買い求め、さらに、翌年生まれた長女・加屋姫のために、再び同じ店から3組の雛を取り寄せています。
江戸からはるばる八代へやって来た琴姫が寂しい思いをしないようにとの章之の優しい心遣いなのでしょう。琴姫の面差しを写すのか、とても品のある美しいお顔の雛たちです。
雛人形とともに飾られる雛道具も必見です。本物の婚礼道具をそっくりミニチュアにしたものや、お姫さまたちが自ら刺繍をほどこした手まりなど、当時の女性たちの暮らしぶりが垣間 見える品々が展示されます。
松浜軒内には、児宮(ちごのみや)という小さな神社もあります。天明元年(1781)、子供たちの無事な成長を祈ってまつられた神社です。江戸時代の優しく美しいお雛さまやかわいらしい雛道具、豪華なお嫁入り道具を堪能したら、こちらもぜひおまいりいただき、楽しいお雛祭りをお過ごしください。