now Loading...

松井家の宝

唐物茶壺 銘 深山 一口
からものちゃつぼ めい みやま

高さ36.1㎝ 口径11.4cm 胴径32.0cm 底径14.2㎝

中国・元―明時代(14~15世紀) 一般財団法人松井文庫所蔵
八代市指定有形文化財(昭和40年5年18日指定)

 唐物茶壺とは、中国南部で焼かれた耳付きの壺で、喫茶の伝来とともに日本に伝わり、主に葉茶を入れる壺として用いられました。

 この壺は、松井家初代康之が豊臣秀吉から拝領したと伝えられ、蓋の裏に千利休の花押があることから、利休が鑑定した可能性も考えられます。「深山」という銘は、胴部をめぐる波状の線刻が山々の連なる景色に見えることに由来するのでしょう。

 文禄2年(1593)11月、秀吉は数々の戦いで手柄をあげた康之を召し出し、石見国半国(現在の島根県西部)18万石を与えて大名に取り立てようとしますが、康之は細川家への忠誠からこれを固辞。その志に感心した秀吉は、茶の湯好きの康之に「深山」の茶壺を与えたと「松井家譜」に記されています。

 天下人も一目置いた松井家の歴史と茶の湯との関わり、当時の茶道具が領地に匹敵する価値を持っていたことを物語る逸品です。